遠くに行きたい-冬講日記(22)

仕事が立て込んできますと、なんだか無性に遠くに行きたくなります。さきに仕事を片付けてから行こうというわけでなく、何とかなるさ!と、風の吹くまま、気の向くまま…、なんとも不思議な性分です。

もうすぐ半世紀も前、西三河の山猿だったころ、鎮守の森の向こうに、「ひかげ」という名の集落があると教えられました。山猿は秘かに、「ひかげ」集落を目指して歩む機会を狙っていましたが、道がわかりませんでした。

古老曰く、ご神体の裏の獣道を登ればよいと…。数メートル先、深い竹藪に吸い込まれていく獣道を、歩む勇気のない山猿でした。

川筋に上るとダムがあり、さらに上流の水源には、年中霧が立ち込めている「ねいけ」がある、それはそれは幻想的な光景だと、これまた小耳にはさんだ山猿でした。これまた行ってみたいものだと思いながら、実現しておりません。

谷間の小さな集落を、山が囲んでおりました。山の奥には巨人が住んでおり、たまにニョキッと顔をのぞかせ、歩いてこちらに来ることもあると、巨人の足が地についたところに、谷間ができて、集落ができて、言うならば見渡す限り、壮大な巨人の住まいであると…。

「だいだらぼっち」の巨人伝承…、大人になって、民俗学を勉強して、知るところとなりました。

道行く人が急ぎ足になるこの時期になると、見たことないものを見たくなります。

石川数学塾大阪
学園前教室・杉浦