春講日記(その22)-久方の光のどけき-

「俺は悪くない。悪くないのに虐げられている。」

卒業生が血相変えて、飛び込んできました。どれほど「悪くない」のか、聞いてみました。

俺は京都大学に通ることを至上命題とした学校に進学した、必ず通るから、無意味に夜更かしすることも、朝起きれないことも、授業中ぼんやりしていることも、すべて無罪である…と、彼は強弁しました。

全部有罪やで…というか、そんなことしてたら、そもそも通らんがな…と。

議論は平行線でした。彼はあれほど恋い焦がれた進学先を中退しました。

小生、彼のその後を、寡聞にして知りません。ちょうど三十年前の、蒸し暑い夜でした。

「異議無~し!」「ナンセンス!ナンセンス!」

三色ヘルメットのご年輩軍団が、銀幕に叫んでいました。何色か?は、秘しますが、小生も一色かぶっておりました。

学生が堅固なバリケードを築き始めると「異議無~し!」。機動隊が学生を弾圧すると「ナンセンス!」。全会一致でした。

不一致もあり?そのとおりです。

集会にて白メットの演説シーンに、白軍団が「異議無~し!」。赤と青が「ナンセンス!」。

赤メットが阻止線を突破すると、赤軍団が「異議な~し!」。白と青は、し~ん。

映画の名前は『二十歳の原点』。原作は高野悦子さんという、立命館大学全共闘の女性闘士が残された日記です。

奇しくも小生の誕生日6月24日に、JR山陰線を「旅」の終わりとされました。

世の中に牙をむく高野さんと、やり過ごそうとする世の中と、JRの線路のような平行線が、ここにもありました。

銀幕の名前は「京一会館」、叡電一乗寺にあった小さな映画館でした。

高野さんが闘いに倒れてのち、はや半世紀が過ぎ去ろうとしています。

石川数学塾大阪
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