複素数は実在するか その3

ここのところ寒暖の差が大きい日が続いております。
真夏のような暑さかと思えば昨日おとといは半袖で過ごすには涼しすぎる陽気でした。
風邪など引かれないよう充分ご注意ください。

さて、表題について前回までの内容を結論だけでまとめると、
「複素数」はおろか「負の数」は実在する物理量ではなく、計算の利便性などから由来する代数学上の概念である。
補足するならば、いわゆる複素数などは計算規則のみ定義されただけのただの「記号的表現」に過ぎず、この定義に反しない限り、私たちが現実の世界でそれにどのような意味を与えても良い…と悪し様に言えば割り切ってしまったわけです。

特に複素数は\(x\)の2次方程式
\(x^2+x+1=0\)
を解の公式に従って解けば
\(x=\frac{-1\pm\sqrt{-3}}{2}\)
と簡単に出現してしまうので、数学として扱えるようになることは大いに意味がありました。

そんな記号的表現を用いて表された概念ですが、次の4つの定義と、それぞれの演算に対して交換法則・結合法則を満たしているかどうかで数学においての扱いやすさが変わります。
複素数の例と合わせて見ていきましょう。
1.相等
\(a+bi=c+di\)であるとは\(a=c\)かつ\(b=d\)である事を意味する。
2.和・差
\((a+bi)\pm(c+di)\)とは\((a+c)\pm(c+d)i\)を作る事を意味する。
3.積
\((a+bi)(c+di)\)とは\((ac-bd)+(ad+bc)i\)を作る事を意味する。
4.商
\(\frac{a+bi}{c+di}\)とは\(\frac{ac+bd}{c^2-d^2}+\frac{bc-ad}{c^2-d^2}i\)を作る事を意味する。ただし\(c^2+d^2\neq0\)
つまるところ四則演算がいかなる場合でも行えるかどうかがポイントです。

大雑把になりますが、1.は前提として、各種演算についてこれらのうちのいくつを満たしているか、結合法則・交換法則を満たしているかで「群」「環」などと呼ばれ、数学において重要な地位を確立出来るわけです。
ちなみに複素数は4つ全てに対して結合法則・交換法則等を満たしていますので「体」に属しています。

「体」である場合、今まで学んできた代数学的な性質や変形の大部分が利用できます。
未知の数値・変数を\(x,y,\ldots\)と置き換えて数式変形は十分に問題なく行えるようになります。
複素数の場合、\(a+bi=z\)と実部・虚部丸ごと1つの文字で表現する事も認められます。
そうなると数式展開や因数分解が出来るだけでもかなり便利ですね。
逆に\(z=a+bi\)に従って実部と虚部に分けて考える事も出来てしまうので複雑になる事もあるのですが・・・

学園前教室 青木